吃音障害は、見た目ではわかりづらいものの、本人にとっては大きなストレスや葛藤を伴う言語の障害です。日常的な会話の中で言葉が詰まったり繰り返したりすることで、コミュニケーションに苦手意識を持つ方も少なくありません。この記事では、吃音障害とは何か、なぜ起こるのか、そして周りの人たちができるサポートや理解の在り方について解説していきます。
目次
吃音障害とはどのような障害か
吃音障害とは、言葉を話すときにスムーズに言葉が出てこなかったり、同じ音を繰り返したり、言葉に詰まってしまう障害です。本人の努力や練習だけでは改善しにくい部分があり、周囲の理解と支援が重要になります。
たとえば、「こんにちは」と言いたいときに「こ、こ、こ、こんにちは」と繰り返すケースや、「こーーんにちは」と音を引き伸ばすパターンがあります。意識して直そうとすればするほど悪化することもあるため、正しい知識を持つことが必要です。
吃音の原因を理解する
吃音は、心の弱さや性格によるものではなく、複数の要因が絡み合って起こるとされています。主な原因は以下のように分類されます。
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神経・脳の働きの特性
脳内の言語処理に関する仕組みが通常と異なる働きをしていることがあります。 -
遺伝的要因
家族の中に吃音を持つ人がいる場合、遺伝的な傾向も見られることがあります。 -
心理的・社会的要因
幼少期のストレス、プレッシャーの多い環境などが影響するケースもあります。
吃音は努力不足で起こるものではありません。これを理解することが、接するうえでの第一歩になります。
大人になってから吃音になることもある
吃音は多くの場合、子どものころに発症しますが、実は大人になってから突然発症することもあります。これは「成人発症性吃音」と呼ばれ、以下のようなきっかけで起こることがあります。
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強い精神的ショックやストレス
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脳卒中や脳の外傷などの神経的なトラブル
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突然の環境変化により言葉が出にくくなるケース
本人にとっては突然現れた問題に戸惑い、周囲の反応に過敏になることもあります。大人になってからの吃音に対しても、理解と思いやりが必要です。
吃音がある人が抱えている苦労
吃音がある方は日常のさまざまな場面で次のような困難を感じることがあります。
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電話でうまく話せず、緊張してしまう
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自己紹介や会議で発言するのが怖い
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言いたいことをあえて短くする、話すことを避ける
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他人に変な目で見られたり、からかわれる経験をしてきた
こうした経験は、自己肯定感を下げ、孤立や不安の原因になることがあります。私たち一人ひとりが理解ある姿勢を持つことで、本人の負担を大きく減らすことができます。
吃音のある人への配慮
吃音がある方に対して心がけたい接し方をご紹介します。
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話の途中で言葉を補わない
途中で言葉が詰まっても、先回りして言葉を補うのは控えましょう。本人のペースを尊重することが大切です。 -
話を遮らず、最後まで聞く
たとえ時間がかかっても、最後まで聞く姿勢を持つことで安心感を与えられます。 -
からかわない、笑わない
冗談のつもりでも、吃音に関するからかいは深く傷つけます。丁寧な態度を意識しましょう。 -
焦らせない・急かさない
急かされることで吃音がひどくなることがあります。落ち着いた環境を作ることが大切です。
吃音を個性として受け止める社会へ
吃音は「治さなければならない欠点」ではなく、その人の一つの個性として尊重されるべきものです。誰もが自分の言葉で安心して話せる環境を作るには、社会全体の理解と支援が必要です。
学校や職場、家庭など、どんな場面でも「話すことに苦手さを持つ人がいる」という認識を持つだけで、誰もが話しやすい空気を作ることができます。
まとめ
吃音障害は見えづらい障害ですが、本人にとっては非常に大きな悩みとなることがあります。健常者である私たちが、吃音に関する正しい知識と理解を持ち、思いやりのある接し方をすることで、吃音を持つ方々が安心して言葉を発せられる環境が生まれます。
大切なのは、話すスピードや滑らかさよりも、心からの言葉を受け止めようとする姿勢です。共に生きる社会の一員として、ぜひ吃音についての理解を深めていきましょう。
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